狭心症


 検査所見

  1) 心電図


非発作時 約半数の症例は正常所見を示す.

異常所見としてはT波の逆転が多く、特に虚血発作が頻発している不安定狭心症患者にみられる.

心筋梗塞既往のある患者では異常Q波を認める.
発作時 ・ 心内膜下虚血→ST低下
・ 貫壁性虚血→ST上昇

左冠動脈前下行枝領域の虚血発作時に、胸部誘導にて陰性U波を認めることがある.
不整脈 発作時に期外収縮やその連発(心室頻拍),洞除脈や房室ブロックを認めることがある.

特に異型狭心症では重篤な不整脈が出現しやすい.これは攣縮による冠閉塞のため、高度の虚血が生じるなどの致死的不整脈が起きることもある.
虚血部位の診断 ST変化が12誘導の中のどの誘導に認められるかで、ある程度の部位診断が可能である.



  2) ホルター心電図検査(24時間心電図検査)

  自然発作時の心電図変化を記録する方法である.

器質性狭心症 心拍数増加
ST低下
異型狭心症 夜間から早朝のST上昇発作
  ただし、心電図記録中に自然発作を捉えることは必ずしも容易でない.

  3) 負荷心電図検査

  自然発作時の心電図変化が記録されない例では、心筋虚血発作を誘発し、心電図を記録する方法が採られる.

    a) 運動負荷試験

  運動負荷により心筋酸素消費量を増加し、虚血発作を誘発する方法である.運動負荷試験に対する反応は狭心症の病態により異なる。



狭心症の病態別にみた運動負荷試験の特徴
1.器質的冠狭窄に基づく狭心症(器質的狭心症)
@ 負荷時間に関係なく、ある一定以上の負荷で誘発される(発作の再現性)
A 発作は負荷中に誘発され、負荷量の増加とともに憎悪する
B 心電図上ST低下を示す
C β遮断薬が有効である

2.冠攣縮が関与する狭心症(冠攣縮性狭心症)
@ 早朝には誘発されやすく、午後からは誘発されにくい(発作の日内変化)
A 誘発されやすい時期と、そうでない時期がある(disease activityの変動)
B 発作は負荷中のみでなく負荷後に起きることがある
C 心電図上ST上昇を伴うことが多い(異型狭心症)
D 負荷中に起きた発作が、負荷を続けると消失することがある(walk‐through現象)
E Ca拮抗薬が有効で、β遮断薬はむしろ悪化させる



 

  4) 血液性化学検査 

  心筋壊死の徴候はなく、白血球増加やCK,GOTなどの心筋マーカーの上昇は認められない.ただし不安定狭心症ではトロポニンTが軽度異常値を呈する.

  危険因子として、以下のようなものがしばしば認められる.
  ・ 高脂血症(特に高コレステロールまたは高LDL血症)
  ・ 低HDL血症
  ・ 糖尿病(耐糖能異常)
  ・ 高尿酸血症

  5) 画像診断

    a) 胸部X線写真

  狭心症に特異的所見はないが、発作を繰り返し心不全の状態となれば、肺うっ血像を認める.

    b) 心臓超音波検査

発作時 虚血部位の壁運動異常(低収縮〜無収縮)が観察される
非発作時 特異的な異常所見は認められない

ただし発作の後に壁運動異常が持続し、梗塞病変との鑑別を要する場合がある
(心筋スタンニング,ハイバーネーション)
心筋細胞が生存しているにもかかわらず収縮性が低下する
カテコラミン刺激により収縮性が改善するため、鑑別は可能である
  心筋梗塞既往例では、梗塞部の低〜無収縮が認められる.

    c) 心筋シンチグラフィ

  タリウム201(201Tl)の初期分布は心筋血流を、晩期分布は心筋のviabilityを反映する.
非発作時 正常分布
ただし、運動負荷やアデノシン負荷により発作を誘発すると虚血部は欠損する.
再分布像
 (4〜24時間後)
欠損は消失する.
心筋梗塞既往例では梗塞部は恒久的に欠損する.
  心筋脂肪酸代謝をイメージングするトレーサーとして123I‐BMIPP(β‐methyliodophenyl pentadecanoic acid)が最近用いられている.好気的状態では、心筋エネルギー代謝の60〜70%は脂肪酸のβ酸化に依存している.心筋が虚血に陥るとエネルギー源として脂肪酸の割合が著名に低下し、123‐BMIPPの心筋集積率が低下する.実際に高度の器質的冠狭窄があれば安静時より集積低下を認めることが多く、虚血の範囲の評価に有用である.

    d) 冠動脈造影検査

  器質的狭窄病変の評価,冠攣縮の有無の評価,および治療方針の決定などを目的として行われる.

器質性狭心症   内腔狭窄度と冠血流予備能の関係より、冠動脈造影にて狭窄部内径が近位および遠位の正常部内径に比して50%以上狭窄している場合を有意狭窄病変とする.
  ただし冠動脈全体がびまん性に狭小化すれば、その中の狭窄病変は過小評価されることとなる.

  冠動脈造影により、有意狭窄病変の部位と形態,石灰化の有無,病変枝数,側副血行の有無などを評価する.
  なお攣縮の関与があれば狭窄度を過大評価する可能性があるので、硝酸薬投与により冠動脈を十分に拡張し評価する.
冠攣縮性狭心症 病歴より冠攣縮の関与が考えられた場合には冠攣縮誘発試験を施行する.
  実施に際しては起こりうる合併症(持続性または広範囲の虚血による血圧低下,不整脈など)への対策を整えておく必要がある.
  最後に硝酸薬を投与し、器質的狭窄の有無と程度を評価する.

    e) 左室造影検査

  左心機能の評価を目的として行われる.局所壁運動,左室駆出率,拡張末期容量,僧帽弁逆流の有無等を評価する.
  心筋梗塞既往例では左室機能低下がみられる.